糖尿病の治療ガイド

-自己血成分(フィブロネクチン)点眼による角膜治療-

自己血成分(フィブロネクチン)点眼による角膜治療

角膜治癒を促進させるフィブロネクチン

点眼治療に用いられるのは、体になくてはならない糖たんぱく質の一つで、フィブロネクチンという成分です。細胞と細胞を結びつけ、体の組織を作ったり、傷を治したりするのにかかわっています。

山口大眼科教授の西田輝夫さんは1980年代から、角膜の傷が治る際、フィブロネクチンが治癒を促進させる重要な役割を果たしていることを初めて突き止め、治療への応用を研究してきました。

フィブロネクチンは、血液中に多く含まれています。ただし人の血液から採った成分を一般用の点眼薬として使う場合、ウイルス感染の可能性があります。そこで西田さんは、患者本人から採った血液から、数時間でこの成分を抽出して点眼薬を作る簡易装置を開発しました。自己血を用いることで、治療の安全性を確保しました。


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自己血成分(フィブロネクチン)点眼の治療法

患者は1週間に1度通院します。採取した10~20ミリ・リットルの血液から、1週間分にあたる2ミリ・リットルのフィブロネクチン点眼薬が精製されます。患者が検査や診察を受けている間に出来上がり、当日に点眼薬を持ち帰れます。1日4回点眼し、通常4週間続けます。

角膜の傷は、外傷のほか、角膜ヘルペス感染、糖尿病による神経障害で角膜の表面が損なわれる糖尿病角膜症、三叉(さんさ)神経の手術後のまひ、コンタクトレンズによる障害と、多様な原因で生じます。

軽い傷なら、体内にあるフィブロネクチンの作用などで多くは治りますが、感染や神経障害が長引くと治りづらくなります。自己血による点眼治療は、この成分を補って治癒を促します。

山口大病院で、2000年4月から2005年3月までに点眼治療した249例では、202例(81%)に効果がみられました。障害の種類によっても効果に差があり、ヘルペス感染や糖尿病神経障害で角膜表面が損なわれた場合(有効率74%)に比べ、外傷性(同94%)などには効果が高かったです。

山口大のほか、国立病院機構・東京医療センター(東京都目黒区)、眼科三宅病院(名古屋市)、宮田眼科病院(宮崎県都城市)の4病院で、同大で開発した点眼薬の自動作製装置を用いた臨床試験が始まっています。

西田さんは「これまで有効な治療法がなかった角膜障害が治る可能性が高まりました。自己血で作るので、安全性も高い」と話しています。

山口大病院ではさらに、治癒の難しい糖尿病角膜症やヘルペス感染後の角膜障害に、神経伝達物質(サブスタンスP)とインスリンに似た成長因子(IGF―1)の成分から作った新しい点眼薬を開発して、フィブロネクチンだけでは効果がない患者への応用を進めています。


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関係医療機関

山口大病院眼科

国立病院機構・東京医療センター

眼科三宅病院

宮田眼科病院

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